2014年6月24日火曜日

四日目:『ようこそサントリーニへ(ギリシャ)』:白壁の街






このクルーズの目玉宣伝に使われている写真の多くはサントリーニ島の真っ白い壁の建物群。
今日の目的地はそこである。
ファンタジアが接岸できる埠頭はないため沖合から無料のテンダーボートで島に上陸する。
通常はエクスカーションに載せられているツアーで見て回る。
しかし、これに参加しなくてもサントリーニの見学はできる。
上陸したあと、見学を終えてまたここへ戻ってくれば船に戻れる。



ただ最終便は「16:00」でなのでこれに間に合うようにしないといけない。
戻れないときは
「船は出ていく、我が身は残る」
ということになりかねない。
船は決して待ってくれない。
乗り遅れたお客は置き去りにされる。
これ、クルーズの常識 だという。
怖い常識である。
実際、乗り遅れた日本人クルーズ客の悲劇を聞いたことがある。







●ファンタジア・テンダーボート・フィラ埠頭・ロープウエイ

この埠頭は「フィラ Fira」の埠頭でこの断崖の上に「Fira」という街がある。
そこにはケーブルカーで行くか、階段を登るかの方法になる。
目的地の白い建物群があるのは「イア Oia」という街になる。
ツアーに参加していない我々はケーブルカーか階段道を登ってフィラの街からタクシーでイアにいくことになる。
だが上陸してわかったのは、この埠頭から船で海沿いにイアにいき、帰りはバスでフィラに帰ってくる観光コースがあるということ。
早速そのチケットを買ってコースをたどることにする。



「Oia」を「イア」と呼ぶのは奇妙である。
語頭の子音は発音しないというのはよくある。
例えばフランス語では「Hotel」は「オテル」と発音されるのはよく知られている。
しかし、先頭の母音が発音されないのは珍しい。
それに母音が3つ並ぶのも不可解に思える。
普通なら「オイア」となるが、動画では「オアイア」との発音が入っている。
でも検索してみたら日本にも母音だけの地名があった。
相生で「Aioi」である。
世の中広い。
これギリシャだとなんと発音するのであろうか。
もし先頭に母音が並ぶときは先頭の母音は発音しない、なんて規則があると「イオイ」となるが。

船に乗り込み半時間ほど、イアの姿が崖の上に見えてくる。







イアの埠頭で降り、バスに少々揺られてイアへ。
イアの見学に入る。



壁とは日本でみるところの白シックイで仕上げされているのかと思っていた。
しかし、単に白ペンキで塗りたくっただけのもの。
ペンキを使った建物パフォーマンスである。
街の法律で壁を白ペンキで塗るように義務付けられているらしい。
こうすることによって観光地として名を盛せている。
狭い路地には観光客が群れをなして歩いている。
落とされる金銭も尋常のものではなかろう。
もし、この白ペンキ発想がなかったらあっという間に「サシ・イン・マテラ」ような煤けた廃墟になっていたのではないかと思う。











●この動画に映っているのは、イメージでいくと左がマテーラで、右が本物のサントリーニの建物である。

この街、写真うつりはいいのだがなにかしっくりこない。
作為が感じられるのだ。
いいかえると『やらせ』がある。
ではその「やらせの評価」はいかに?と問われれば「最高だ!」と答えることになる。
かくも大掛かりなものは珍しいだろう。
つまり、「在るもの」ではなく「作ったもの」になる。
若い時は感動が新鮮に溢れ出るものである。
それは初めて出会ったもの、あるいは見たものを純粋に客観的に見られるからである。
それは自分と対象物の間に汚されない距離があるからである。
しかし長い間人間をやっていると感動がなくなる。
初めて出会ったもの、見たものの印象がそのとき一瞬のうちに自分の感覚に取り入れられ、その状態で対象物を見ることになるからである。
対象物を純粋に客観的にみることができないようになっているのである。
見たときに、その瞬間に主観的な要素が含まれてしまうのである。
そんなことからサントリーニは主観の対象物で『やらせモノ』になってしまう
マテーラははるかに客観的な対象物になる。
なぜなら個人ではとても踏み込めない歴史の重さがそこに横たわり、人の侵入を拒否しているからである。
サントリーニは人が作る街であるが、
マテーラは歴史しか作れない街になる。
ペンキを塗るという作為によって、歴史は一気に人間の手中に引き寄せられてくる、ということになる。
遺跡指定といったあなたまかせのようなものに手足を縛られるより、積極的に打ってでる。
そんな前向きの人間の行動力がここには息づいている。
その行動力の大きさが小粒な人間をいらだたせるのかもしれない

ウイキペデイアを載せておく。



サントリーニ島(Santorini) もしくは ティーラ島(Thira)は、エーゲ海のキクラデス諸島南部に位置するギリシャ領の火山島。
かつて大爆発を起こした火山が形成したカルデラ地形で、本島を含めた5つの島々の総称としても用いられる。

カルデラ湾を望む断崖の上に白壁の家々が密集する景観でも知られており、エーゲ海の著名な観光地の一つである。
一方で、サントリーニ・カルデラ内では現在も活発な火山活動がある。

この島は、古くは「もっとも美しいもの」を意味する「カリステー」( Kallístē)や、「円形のもの」を意味するストロンギレー( Strongýlē、あるいは「ストロンギリ」)、または「テーラ」(Thēra)と呼ばれていた。
「サントリーニ」( Santorini)の名は、13世紀にラテン帝国のもとでつけられた名で、ペリサの集落にある聖イレーナに献じられた教会から採られている。
オスマン帝国の時代にも、これに由来する Santurin や Santoron と呼ばれた。
「ティーラ」(Thira)の名は、19世紀に島と中心集落の公式名称として再び用いられることになった(島の中心地フィラは、「ティーラ」の別発音である)。
しかし、現在も日常的には Santorini の名が使われている。

Santorini のカナ転記としては「サントリーニ」が良く使われているが[1]、ギリシャ語の発音 [sadoˈrini] に従えば「サンドリニ」 が原音に近い。
なお、この島の日本語表記には「サントリーニ」「サンドリニ」のほか「サントリニ」「サンドリーニ」「サントリン」、「ティーラ」のほかに「ティラ」「テラ」などの表記ゆれがある。


後で聞いたところによると少々曇り気味であったのがよかった、という。
日差しが強いとこの白壁の照り返しが半端ではなく、とんでもなく暑くなって観光どころではなくなってくるという。

みやげ屋で買ったチープな絵がある。



絵心があればだれでも書けそうな荒いタッチ。
皆が思う、昼間は壁をせっせと白ペンキで塗っている職人が夜になると、そのウップン晴らしの内職でササーと描いているのではないだろうかと。
確かにそんな気分が濃厚に伝わってくる絵である。
下の2枚は磁気紙に貼られていたものである。




おみやげ屋で「日本人か」と聞かれた。
「そうだ」と答えたら
『オ・モ・テ・ナ・シ』
と一句一句区切って発音された。
2020年東京オリンピックのチャッチフレーズだが、今後は
「日本=おもてなし」
のイメージが国際的に定着していくのかもしれない。

レストランに入ってみる。
メニューのビールの項にギリシャ文字が踊っている。
「これ、ギリシャのビール?」
と尋ねたら「そうだ」という。
早速注文。
美味しい。
ファンタジアの水みたいな生ビールばかりを飲んで少々食傷気味なせいか、やたら舌触りがいい。
ちょっと濃厚な「一番搾り」のような感じがする。



ラベルはアルファベットで「FIX Hellas」とある。
「FIX」は会社名であろう。
「Hellas」とは辞書ではギリシャの古代名とあるが、ゼウスの妻の名が「ヘラ」であったはずだが。
この「FIX(フィックス)」ビールに味をしめアテネのカフェで軽食をとったときも注文した。

[寄り道1]
「サントリーニとビール」とくれば、
「サントリービールと竹内結子」
であろう。
個人的なことだが、私は竹内結子のファンなのである。
このCMの背景はサントリーニである。
5月26日公開ということは、たった9日前になる。
FIXビールもいいが、これも飲んでみたい!

https://www.youtube.com/watch?v=UwOv7_KMSUI


●サントリー ザ・プレミアム・モルツCM|2014 竹内結子
 2014/05/26 に公開
2014年5月 サントリー ザ・プレミアム・モルツTVCM 15秒
竹内結子「香るプレミアム」篇
Yuko Takeuchi

下は食事のときレストラン横を通ったのがドンキーの列である。



これイアのストリートパフォーマンス。




まるで石像のように見える。
原則的にはピクリとも動かないのが鉄則。
でもこの像揺れているし。
目玉が動いてしまっている。
まだ修行が足りない。

[寄り道2]
ベネチアでみたのは中年女性の物乞い。
ヒザを折って下を向き、右手を頭と水平に、手のひらを上にとスッと差し出している。
まるで動かない。
服装からして単なる物乞いであることは明瞭。
手のひらに現金を置いてくれ、ということだろう。
娘いわく「働け!」
東京激戦区で営業をしていただけに言うことがきつい。
話によればこの一族というかグループは政府から生活保護を受けて生活に困らないという。
よって物乞いで稼いだお金は今夜の酒代になるという。
でもあの揺るぎないポーズは並ではない。
日本人風にいうと「恥」を知らない連中ということになる。
そういう訓練をする学校もこのグループは持っているとのこと。

アテネでは小学低学年くらいの少年がアコーデオンを引きながらカフェを周り歩いていた。
平日のことで学校はどうしたのだ気になってしまった。
コルフではいい青年がテーブルを回っていたという。
まさに「働け!」である。
ギリシャは経済危機で就職先がないというが、物乞いはないだろう。

ストリートパフォーマンスならこの人が最高。



パドバの路上である。
ギターやバイオリンならわかるが、あのでかいグランドピアノを路上に出して弾いているのである。
これには帽子に小銭を入れたい心境にもなる。
一番くだらなかったのが同じくパドバのパンダのぬいぐるみを着た物乞い。



非常におもしろくはあるが芸がない。
誰も恵みをしない。

さてイアを後にしてバスでフィラに戻る。
フィラへ戻るバス発着所で少々ドッキリした。
一人でその場所へ戻ったのだが、指定番号のバスがいない。
時刻はちょうど発車時間。
ヤバイ、もう出ていってしまったのか?
女3人組は「ワレを見捨てたか!」
とすると、とるべき方法は?
タクシーでフィラまで行けばいいことなのだが、それができない。
お金がない、つまりユーロをもっていない。
カードで乗れるタクシーはあるのだろうか、あるいはこの街にはカードでユーロをおろせる引出機はあるのだろうか。
ダメだろうな、ないだろうな、などと考える。
ウーン、やはり少々ヤバイかも。
てなことを思っていたら、「コッチコッチ」という声が聴こえる。
向こうに娘がいる。
駐車場は上下にあり、私のいたのは下の駐車場、バスは上の駐車場から出るという。
急いで上の駐車場へ向かう。
何とかセーフ。

[寄り道3]
本当にユーロがなくて困った経験を後日している。
クルーズ旅行を終え、帰国のためベニスからベニス空港までは水上バスで行くことになった。
一人15ユーロである。



その分をのぞいて、残ったからということで暑いのでジェラード(アイスクリーム)を食べてしまった。
船に乗り、係が回ってきて言う。
「一人16ユーロ」。
えーっつ。
スーツケースには荷物代として1ユーロかかるのである。
つまり、別に4ユーロが必要になる。
急いで4人の持ち金全部を集めたのだが、どうにも数十セント足りない。
どうする?
「カードで支払いたいが」
と聞いてみる。
もちろんダメである。
でもちゃんと国際観光地にはそれなりの対応策がある。
船を降りたら、カード゙決済のできるところへ連れていくから、とのこと。
その窓口で、3人分を現金で、1人分はカードで支払うということになった。
そこで今度は15ユーロほど余ることになる。
ならばと、ベニス空港でビールを飲んでしまった。


講談社の20年前の1994年版の世界全地図の解説によれば


カルデラを囲む崖縁の街フィラからのぞむ日没がこの島の売り物だった。
現在では火山灰にうもれていた紀元前16世紀の都市遺跡が、同島南端のアクロテイリ村近くで発掘され、「エーゲ海のポンペイ」として注目を集めている。

という。


●フィラからみる火山

ファンタジアの後ろに横たわるのが Volcano つまり火山。
フィラやイアのあるサントリーニ島はこの火山の外輪部にあたる。
下記の写真・地図でみるとわかりやすい。
「NEA KAMENI」が火山部分、それを囲む「サントリーニ」あるいは「THIRASIA」が外輪山にあたる。
火山全体は頂きだけを残して海に沈んでいる。
その結果がこんなサントリーニの島影を形成したようである。
なをこの火山を見て回るツアーもある。




【資料】

 新世界紀行

●新世界紀行 古代地中海伝説:サントリーニ火山大爆発の影響


 モーゼの「出エジプト記」とサントリーニ島大爆発の関係のドキメンタリー。

地球ドラマチック


●嘘と真実 56 古代<1>十戒、モーゼ
https://www.youtube.com/watch?v=qoidDZ13dyg



フィラもイアと同じく崖の上にあり、埠頭はその直下にある。
フィラも巌壁にしがみついた感じの白い家々がある。



沖にファンタジアが停泊している。
下りなのでケーブルカーを使わずに歩いて降りてみる。
と、この道、人だけでなくドンキーも通っている。
トンキー・タクシーである。
観光客を乗せて列をなして登り、そして下る。



ドンキーにとってはいい迷惑なことである。
登り下りを永遠にさせられている一生である。



ドンキーを避けながら、フンを踏まないようにして坂を降りていく。



あまり足元に注意を奪われる突然横にドンキーが現れたりする。
なかなかドッキリである。









埠頭にいたのがこのネコ。
横を人が通ってもまったく動じない。


ネコは習性からして警戒心が強い。
無防備に人の行き交うところで寝たりはしないのが普通。
だがこのネコ、まったく人に動じない。
ところ変わるとネコの本能もマヒするのであろうか。
働け!ネコ!donkeyをみならえ!...???...
  どうも神様はネコを甘やかし、ロバだけに差別的試練を与えるようである。
きっと神様というのはネコ好きなのだろう。
神様にも好き嫌いがあるということだ。


デイナーは昨日の味の回復を経験したあとなので出かけてみた。


うーん、今日のはすばらしい。
ひじょうに美味しくなっている。
ファンタジアのレストランは『だんだんよくなるホッケの太鼓』か。
この味なら『星つきレストラン』である。


シアターはアクロバットの海賊ショーである。
男芸である。




[寄り道4]
「女3人組は、ワレを見捨てたか!」
と書いたが、これには伏線がある。
実際に私は女3人組にベニス近郊の街で見捨てられたことがある。
街を見ながら駅を探して歩いていた。
何気なく後ろを見たらいない。
「やられた!」
と思った。
いつかやられるだろう、とは思ってはいた。
なにしろ、関係なく勝手な行動をする3人組である。
とりあえず、動かずにその場で待つことにした。
見失った時の原則は
『その場所を動くな』
である。
10分ほどして、ジェラード(アイスクリーム)を舐めながらやってきた。
つまり、おいしそうなジェラード屋があったので、前を歩く私に一言の声もかけることなくスーと入ってしまった、というわけである。
もちろん、これは序の口。

本番はこれから。
駅のキップはタバッキといういわゆるタバコ屋でも買える。
「タバッキでキップ買うから」
と言う。
私はそこで待つことにした。
そして皆いなくなった。
1時間待つが誰もこない。
今度は完全に見捨てられた。
こうなってはいくら待っていても来ないだろう。
今日はサンタルチア駅に出て、水上バスでムラーノ島というところへ行く予定になっている。
手元にはホテルでもらった小さな地図があるし、ホテルからは歩いてきたので場所もわかる。
迷子になる心配はない。
やむえない、この街の裏側でも歩いてみるか、ということになった。
広場、市場、そして百貨店。



●朝のミストレの広場

アッチコッチいろいろなところをフラフラぶらぶら。
地図に大きな公園が載っている。
住宅地を抜けて行ってみる。
黒鳥やクジャクなどが放し飼いにされている。
日向ぼっこを兼ねて、のんびりする。

5時になれば、ムラーノ島に行った連中からも連絡があるだろうと思ってホテルへ戻る。
3人組はいた。
ムラーノ島には行かなかったという。
話だとタバッキから駅へ行ってそこで待っていたという。
見失ったところから駅は20分くらい先にあったという。
20分となればどうにもならない。
ホテルでもらった小さな地図にはこの駅は出ていない。
そのくらい遠い。
待っている場所が違えば会えるわけがない。
この街、ベネチア・ミストレという。
 『ミストレで見捨てられたミステリー』
となる。